フランス語と英語の類似点と効果的な学習法まとめ 〜同時に学ぶために〜
フランス語に興味をもつきっかけは人それぞれ。
とはいえ、英語 “も” できるに越したことはないですね。
そこでよく浮かぶ疑問は、
「フランス語と英語は同時に勉強できる?」
というもの。結論から言うと、インプットとアウトプットをバランスよく勉強すれば、相乗効果を期待できます。
というわけで、この記事では、
・同時に勉強するための効果的な方法(インプット・アウトプット)
について具体的に見ていきます。
フランス語と英語の似ているところ
似ているのはズバリ “語彙”
英語の語彙の3分の2はフランス語由来と言われるほど、とくに単語の面で両者はとても似ています。
例を挙げればキリがありませんが、たとえば
などなど。他にも、語形を中心にしたフランス語・英語の対応を見るには、こちらのサイトが参考になります。
« exemple » の例に顕著ですが、フランス語と英語でスペルが微妙に違っていたり、
また « juste » によくあることですが、つい発音を混同しがちだったりと、
細かい点はありますが、それでも語形と意味を、2つの言語で同時に覚えることは、多くの場合さほど難しくありません。
フランス語と英語を同時に学ぶ一番のメリットは、似ている単語が多いので、一方の言語で覚えきれていない言葉を、他方の言語から推測できることです。
後で紹介するような、“フランス語と英語を同時に覚える” コンセプトの参考書が出ているのも、そのためですね。
個人的な感覚としても暗記に役立つことは多いです
ただし、これには注意も必要です。
フランス語と英語で形のうえでは似ていても、意味や用法が異なる語もあるからです。
いわゆる « faux amis »(空似言葉)ですね。
これも一例を挙げれば、
逆にフランス語の « actuellement » は英語なら “now” や “at present” になる
逆にフランス語の « chance » は、英語なら “luck” になる
などなど。
« faux amis »(空似言葉)の具体例がさらに気になる方は、こちらのサイトにまとめがあります。
最初から神経質になる必要はなく、徐々に慣れてゆけば大丈夫ですが、
「語形が似ているからといって、意味も同じとは限らない」
ことは覚えておきましょう。
どうして語彙が似ているのか?
フランス語と英語が似ている理由には、歴史的な背景があります。
ひと言で言えば、フランス語を話すノルマンディーの偉い人が、イギリス王位に就いたのがきっかけです。
11世紀半ば、当時のイングランド王ハロルドが北方ノルウェー方面の敵と戦っている隙をついて、
ノルマンディー公ウィリアムがイングランドに攻め込みました。
ノルマン騎士軍を率いたウィリアムは、急きょ南下したハロルドをへースティングズの戦いで敗死させたのち、ウィリアム1世(位1066〜87)として即位し、ノルマン朝を開いた(「ノルマンの征服」)。
つまり「フランス語」を母語とするウィリアム1世が「イングランド王」となったことが、
上流階級を中心に、イングランドでフランス語が広がる契機になったのです。
1066年から15世紀頃までに約1万語のフランス語の語彙が中英語に取り入れられ、そのうち7500語が現代英語に伝わっている
興味のある方は、上記のコラムにさらに詳しい解説があるので、ぜひご覧ください。
「歴史で謎解き!フランス語文法」は、ふら塾でもよく紹介している、信頼できるシリーズです。
私自身も、フランス語を始める時には “難しい言語だよ” とよく周囲から言われました。
でも実際に勉強し始めると驚くほど単語が似ていて、暗記にはそんなに苦労しなかったのを覚えています。(動詞の活用など、他に大変なことはありますが…)
ちなみに、ドイツ語の学習経験もあるのですが、”英語と近い” とよく言われるドイツ語の方が、むしろ単語はぜんぜん英語と違うし、格変化はあるしで、ずいぶん難しかった覚えがあります。
同時に勉強するための効果的な【インプット】と【アウトプット】
「フランス語と英語を同時に」といっても、両者はあくまで別の言語なので、やみくもに進めてもうまくいきません。
2言語を上達させるためのポイントは、少し難しいですが、
・同時に両者をきちんと使い分ける機会をもつ(アウトプット)
ということです。
そこで以下では、インプット・アウトプットそれぞれにの具体的な方法を見てみましょう。
また「同時に勉強すると、ごっちゃになるのでは?」という、よくある疑問についてもお答えしています。
【インプット】単語・表現を英仏で関連づけて覚える
独学で手軽に始められるのは、単語・表現レベルで2つの言語を関連づけて覚えることです。
そして、それは会話や作文といった “アウトプット” よりは、
むしろ日々コツコツと積み上げる “インプット” でこそ可能になります。
最初に書いた通り、フランス語と英語がもっとも似ているのは “語彙” なので、
スペルや発音、意味の差異に注意しながら、意識的に2言語を比べながら暗記しましょう。
数はさほど多くないですが、フランス語・英語の同時学習に特化したテキストがあり、2言語を比べながら覚えたい人には、以下がオススメです。
単語の暗記にオススメ
・大賀 正喜(監修)『プログレッシブ トライリンガル 仏日英・日仏英辞典』
初学者を念頭に、仏和辞典・和仏辞典それぞれに英語を加えたもの。
アルファベ順、五十音順の並びは「辞典」らしいと言えますが、易しいレイアウトや仏検レベルへの配慮は、どちらかというと「単語帳」に近いです(Amazonのサイトで、少しレイアウトを見ることができます)。
「仏日英」「日仏英」それぞれ見出し語は約4,000。
フランス語音声は小学館外国語辞典のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
(なお「より “辞典” に近く、語数の多いものがいい」という場合は、類書に約13,000項目を収録した三省堂編修所 (編)『デイリー日仏英辞典 カジュアル版』があります)
表現・構文の暗記にオススメ
・久松 健一『英語がわかればフランス語はできる!』
単語帳とは別に、表現・構文レベルで英語と対比しながら勉強するのに効果的。
仏検5級〜3級レベルを念頭に、基本表現・文法を50の例文を付属のCDとあわせて覚えられます。
ただし「この一冊だけでフランス語文法をマスターできる」というよりは、あくまでも英文法の理解をテコに、フランス語文法を理解するのによい本。
「ふら塾」のこの記事で紹介したような、フランス語文法の基本教材とあわせて利用するとよいでしょう。
・久松 健一『仏英日例文辞典 POLYGLOTTE』
こちらはもはや「暗記」というレベルではないですが、フランス語と英語を載せた表現辞典・例文集としては、現時点でおそらく最大規模の一冊です。
中学・高校レベルの英単語を軸に、仏英の類似度、フランス語の使用頻度に配慮して構成されています。
すべての例文について、フランス語と英語の両方が載っているわけではないですが、それでも見出し語のフランス語が英語と類似している場合には、両者が比較できるようになっています(Amazonのサイトで、少しレイアウトを見ることができます)。
初級者はもちろん中級以上でも、「読み物」として、また気になったときに引く「辞典」として、フランス語と英語を同時に学ぶ役に立つでしょう。
“同時に勉強すると混同する” という不安について、ひと言
英語とフランス語が同時に勉強できることはわかった。
でも似ているなら、同時に勉強すると混同して、かえって効率が落ちるんじゃ…
そんな不安を抱く人がいるかも知れません。
あえてハッキリ言いましょう。
同時に勉強する以上、きっと混同する時があります。
ただ、長期的にみればそれで学習効率が落ちることはないでしょう。
いろいろな考え方があるとは思います。
が、そもそも混同するのは悪いことなのでしょうか?
日本人はとかく語学に神経質なところがある場合が多いですが、外国語で話している時にうまく出てこない言葉があるのは自然な現象です。
そして、それをとりあえず別言語の単語で置き換えて、とにかく相手に言いたいことを伝えることだってよくあります。
個人的には、フランス語の勉強の過程で、発音や単語を一度も英語と混同しなかった人を見たことがありません。
もしまったく混同しないとすれば、いずれか一方の言語を知らない人か、逆にとてもよく知っている人ではないでしょうか。
フランス語か英語のいずれかが、ひとまず頭に浮かぶということは、
むしろ言語能力どうしが補い合うことで、学習が進んでいる証拠です(勉強していなければ「なにも出てこない」はずなので…)。
だからこそ、最初から完璧に話そうとするのではなく、
むしろ混同を恐れずに、フランス語・英語を実践的にどんどん使ってゆく姿勢こそが大切なのです。
そのためにできる、簡単で有効な方法が、次に挙げるオンライン会話の利用ですね。
【アウトプット】オンライン英・仏会話を利用する
避けたいのは、「フランス語と英語を混同してしまっているのに気づかない」という状況です。
そこで役立つのが、“アウトプット” で実践的に2言語を使い分けること。
なかでもお手軽なのは、最近ますます増えつつあるオンライン会話を利用する方法です。
英語・フランス語を同時に学ぶうえで、「英語圏の講師とフランス語圏の講師を自由に切り換えて選べるもの」がよいでしょう。
とはいえ、英会話の場合は選択肢が多いので、
と迷うことも多いでしょう。
オンライン英会話については、「英語学習ひろば」さんに詳しい記事
「【33社比較】目的別おすすめできる厳選したオンライン英会話を紹介」
があるので、あわせてご覧ください。
上記の統計によれば、オンライン英会話利用者の3割以上が「DMM英会話」を選んでいます。
「ふら塾」のこちらの記事でも書いたように、「DMM英会話」はもちろん”英会話”が売りです。
ですが、フランス語ネイティヴの講師も登録していて、個別に依頼すればフランス語で喋ってくれます。
価格の安さに加えて、特定のカリキュラムがないぶん、フリートークの力を鍛えることができるのが魅力ですね。
(個人的な感覚としては、1対1のフリートークが一番、力がつきます)
当然ながら、語学は実践的に使う機会が多いほど上達するので、
1度登録するだけで「今日は英語」「明日はフランス語」と切り換えながら続けられるのは、大きな強みと言えます。
先に挙げた「英語学習ひろば」さんの記事から再度引けば、
上記のように語学力の実感には1〜3か月程度の時間がかかるのが普通です。
たとえ少しずつでも「”毎日” 継続するためのペースメーカー」として、うまく利用できるといいですね。
私自身、学習の効果が実感できる(リスニングで言っていることがわかる、覚えた表現が口をついて出てくる等)までには、語学を集中的に勉強しはじめてから数か月はかかりました。
興味深いことに、体感としては自分がどのレベルのときでもそれは変わりません(B1からB2、B2からC1、C1からC2など)。
成果がすぐに出ないと諦めてしまう方がいますが、語学はどうしても時間がかかるので、コツコツ進めましょう。
おまけ 「カナダに留学」の罠
「英語とフランス語を勉強したい」という方がカナダ留学を考える、というケースがあります。
気持ちはわかりますが、2つの言語が話されているという理由だけでカナダを目指すのは避けた方がよいと、個人的には思います。
簡単に理由を挙げると、次のようになります。
理由1 英語圏とフランス語圏は分かれている
大ざっぱに言えば、カナダ10州のうちケベック州がフランス語圏、その他は英語圏です。
そしてケベック州の人口の約80パーセントがフランス語を母語としていますが、モントリオールやケベックシティといった観光地以外は、バイリンガルはじつはさほど多くありません。
「カナダの公用語はフランス語と英語だから…」と、よく日本人がもつイメージとは異なり、フランス語・英語の一方しか話せない人はわりといるのです。
理由2 英語・フランス語どちらも話す人は、相手の得意な方で話す
英語とフランス語を両方話せる人たちのいる場所なら、「どちらも練習できてお得」と思うかも知れません。
ですが、どちらも話せる人は相手に通じやすい言語で話すので、自然とこちらがよく話せる言語を使う頻度の方が高くなります。
留学での語学の伸びは、出発前の勉強量にかかっている部分があるので、
「フランス語を勉強しに行ったのに、けっきょく英語ばかりで話していた」ということにならないよう、きちんと伸ばしたい語学を準備しましょう。
もちろん、上記の理由は語学のことだけを考えたときの話で、ケベック自体が魅力的な場所であることは言うまでもありませんね。
カナダのフランス語圏の事情については、この文章(PDF)に簡潔にまとめられているので、よければ参考にしてください。
まとめ 〜同時に勉強して相乗効果を〜
当たり前ですが、フランス語と英語は違う言語なので、発音や文法などは個別に学ぶ必要があります。
とはいえ、違う言語であるわりには、単語や文構造を中心として共通点が多いのも事実です。
英語をすでに勉強している人なら、フランス語学習は “ゼロからのスタート” にはなりません。
この記事で紹介した通り、
・同時にしっかり2言語を分けたアウトプットを続ける(会話で特訓)
これによって、どちらの力も伸ばすことができます。
学問に王道なし。
語学は時間がかかりますが、コツコツ進めていきましょう!