フランス留学を思い立ったらまず考える事【行先・期間・制度・お金】

 
じゅくせい
留学って興味はあるけど、いろいろ難しそうですね
 
JUKUCHO
具体的に何をしたらいいのか、最初はよくわからないもの。ここでは留学の流れをザッと見ちゃいましょう!

フランス留学を思い立ったらまず考える事は?

留学を考えるきっかけは人それぞれ。

自然と興味がわくこともあれば、家族や友人に勧められて、という場合もあるでしょう。

いずれにしても、留学しようかな? と思い始めたら、いろいろと準備することがあります。語学は勉強中なのに、サイトがフランス語だったりして「なにから手をつけていいかわからない!」という人もいるはず。

わたし自身も、もともと留学なんて全く考えていなかったのに、ある日突然インスピレーションがわいて「よし行こう!」と決めてから、期待と不安のなか手探りで準備を進めていました。

少しでもフランス留学のイメージがわくように、ここでは自身の留学経験や、これから留学する人へアドバイスしてきた数多くの経験から、フランス留学が頭をよぎったらまず考えるべきポイントについて、紹介してみようと思います。

ちなみに、語学学習の他にも、日本・フランスの教育機関とのやりとり、奨学金の申請などすべきことは多いので、本腰を入れた準備は出発の半年〜1年ほど前から少しずつ始めるのがおすすめです!

  •     この記事が想定している主な読者

    ✓ フランス留学の準備についてザッとチェックしたい人
    ✓ フランス留学のことを、ぼんやりと考え始めた人
    ✓ フランス留学を決心したけど、なにから始めていいかわからない人

行先と期間を考える 〜パリのメリット・デメリット〜

どこに行くかを考えよう!

まずは留学先にどこを選ぶかをイメージしましょう。

フランスといえばパリ! と思う人が多いかも知れませんが、フランスは地域によってさまざまな特色があり、それぞれに魅力があります

すべての都市についてここで説明することはでませんが、パリとそれ以外の街のメリット・デメリットを(やや独断で)まとめてみたので、参考にしてみてくださいね。

ちなみに都市の規模(人口)では、フランス第1はもちろんパリで、その後マルセイユ、リヨン、トゥールーズ、ニースと続きます

このなかだとパリは別格として、リヨン、トゥールーズあたりは留学生も多いですね。マルセイユ、ニースは避暑地というイメージでしょうか。留学では他にも、ストラスブール、ボルドー、グルノーブルなども人気です。

  • パリのメリット

    ・鉄道や飛行機でどの地方へ行くにも便利
    ・美術館やコンサートホールが多く、多岐にわたる芸術鑑賞に向いている。また観光名所や各種イベントが年中開催されるので、長期的に滞在しても退屈しない
  • パリのデメリット

    ・語学留学にはあまり向かない(英語を話す人も多く、また日本人も多いのでなんとなく生活できてしまう。またフランス人のフランス語は他の地域より早口なので聞き取りにくい)
    ・家賃・生活費が高い
    ・大都会なので人が冷たいことが多い

  • パリ以外のメリット

    ・語学留学に向いている(フランス語を話さないといけない状況にしばしば置かれるのと、パリよりも言葉が聞き取りやすいことが多い)
    ・地方の特色を知ることができる
    ・比較的短期(1年未満)ならば飽きずに過ごすことができて、フランス人の生活をよく知ることができる
    ・人がのんびり生活している
    ・家賃・生活費が安い
  • パリ以外のデメリット

    ・パリと比較すると娯楽やイベントが少ないので、都会暮らしが好きな人は退屈するかも
    ・他の地域への移動が複雑になることがある

留学に「正解」はないですが、それぞれの街の特徴をあらかじめ知っておくと安心ですね。

行き先で迷っている人に対して、わたしはよく、それが1年未満の短期留学で、かつ何よりも語学力を高めることが目的なら「パリ以外」をおすすめしています

他の都市と比べてみてもパリはやはり別格なのですが、見どころが多いぶん、語学だけに集中するというよりは、観光的な要素も大きくなるでしょう。またパリジャン・パリジェンヌは早口なので、初めてだと慣れるのに時間がかかるでしょう。

もちろん、すでにやりたいことが決まっている人や、いろいろなイベントを見聞きしたい人にはパリがおすすめです。複数回フランスに滞在できるなら、最初は語学留学のために地方で過ごし、その後長期でパリで、というのもいいかも知れません。

地方について言えば、グルノーブルなら大学が理系に強く冬はスキーができる、南仏は気候がよくて地中海がきれい、ストラスブールならドイツに買い物に行ける(日用品はドイツの方が安いです)など人によって重視するポイントはさまざまだと思います。

いずれにしても、生活費がかなり押さえられること、フランス人らしいのんびりした生活が肌の感覚でわかること等は「パリ以外」の大きな利点だと思います。ちなみに、南仏のフランス語はとくに聞き取りやすいです。

いろいろなことを考慮したうえで、最終的にはそこで生活する姿を思い浮かべやすい場所、あるいは単純に行きたい場所を選ぶのが一番だと思います。直感的に行きたい都市を選んでおけば、後で後悔することも少ないでしょうから。

イメージを大切に、自分にとっていちばんの行き先を考えてくださいね!

ひとことメモ 〜OB・OG訪問も〜

 

交換留学の場合は協定校がすでに決まっていて、そのなかから選ぶこともあるでしょう。その場合はすでに留学を終えて帰国した先輩から具体的な話を聞ける可能性があるので、先生や留学センターなどに問い合わせて、紹介してもらえないか相談してみましょう。自分から積極的に動くことが大事です!

期間を決めよう 〜留学は不利じゃない!〜

期間については、自分の予算や計画はもちろん、留学から帰ってきた年度の動きなども含めて考えるとよいでしょう。

大学生からよく聞く声として、9月出発で次の年の7月に帰ると、帰国する年の年度が始まっていて、卒業論文や就職活動の問題があるので悩んでいる、というものがあります。これはケースバイケースだと思います。

一昔前ならともかく、留学経験はいまや企業側にとっても基本的にプラスなので、たとえ1年卒業が遅れることになっても、留学する価値は十分にあるでしょう。大学によっては単位互換の制度を用いるなど、留学込みで修業年限で卒業することも可能です。

ちなみに就職活動についていえば、フランスにいる強みを活かして、ユーロスターでイギリスへ行き、ロンドンキャリアフォーラムに参加してみるというのも手ですね。

キャリアフォーラムについて、詳しくはぜひこちらの記事↓もご覧ください。

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卒業論文についても、大学によって通年登録が必要な場合もあるかと思いますが、たとえば留学を開始する年の前期からゼミに出ておいて、残り半分の仕上げは来年の後期にします、と先生に話をつけてから出国し、教務には帰国する年度始めに(フランスから)インターネットや代理で「卒業論文」の履修登録をするなど、方法は探せば見つかるのではないでしょうか。

どんな制度でフランスへ行く?

昔なら、一般の旅行者としてフランスに入国し、その場でやりたいことを考えながら生活してみて、水が合いそうなら仕事や学校を見つけて途中でビザを切り換える、というパターンもわりとありました。

しかし、とくに高校や大学を通した最近の留学では、滞在が3か月を超える場合、きちんと目的を定めて必要な査証を準備してから出発するのが一般的ですね。

ここではよく利用される制度を4つ紹介してみます。

つまり、個人のレベルで完結する「私費留学」、留学支援機関や学校を通した「交換留学」、長期的に滞在できる「正規登録」、そして留学との境界がやや曖昧な(でも留学としても使える)「ワーキングホリデー」です。

私費留学

日本国籍の所有者であれば、EU加盟国のうちの「シェンゲン協定」圏内(フランスも含まれます)における「あらゆる180日間における最長90日」以内の短期滞在ビザが免除されます。

つまり3か月程度までの短期語学留学であれば(直近の180日以内にシェンゲン協定圏内に滞在していない限り)、大使館に行ったり、移民局に書類を提出したりといった煩雑な作業なしに、ふつうの旅行感覚で滞在できるということですね。

このタイプの留学は旅行代理店が取次をしていることも多く、宿泊費(ホームステイが多い)も料金のなかに含まれているので、初めての留学としてはハードルが低い反面、手数料を取られるので割高になる可能性があります。

かかる費用を少し抑えようと思えば、まずパンフレットやインターネットなどで語学学校を探して(その際、立地や料金に加えて、1クラスの人数が多いか少ないか、日本人が多いか等の情報も確認しておきましょう)学校の目星をつけたら、代理店ではなく直接語学学校にコンタクトをとり、コース登録と宿泊地の手配を依頼する、あるいは自分で宿を手配するという方法もあります。

交換留学

「私費留学」タイプでの渡航は、英語圏への短期語学留学では一般的ですが(大学生協などにパンフレットがあることも多いです)、フランス語圏の場合、むしろ一般的なのは交換留学でしょうか。

これは日本の高校や大学に在籍し、学費を納めた状態でフランスの学校に留学、そこで半年ないし1年を過ごすというものです。

交換留学の利点はやはり、その手軽さと現地での負担の少なさでしょう。個人的には、初めての留学プランとしておすすめです。

手軽さというのは、日本の教育機関に在籍したまま留学ができるので、基本的にはサポートしてくれる部署があるということ。

申請は原則として日本語で行い(場合によっては語学能力の証明が必要)、応募者多数のときは(←フランス語圏の場合あまりありませんが)選考に通れば、学生寮など宿泊施設の手配までしてくれることがあります。

最長1年で必ず帰らないといけない、という制約があるとはいえ、総合的に見て非常に便利な制度だと思います。

正規留学

「1年だけでは短い」「フランスの大学に正規の学生として登録したい」という人もいるでしょう。もちろん、それも可能です。

フランスの大学は日本のように入学試験があるわけではなく、「バカロレア」という高等学校教育修了資格を持っていれば(日本人であれば高卒資格があれば)、一部を除いて基本的にどこの大学にでも登録することができます

ただしその場合、学士課程なら通常DELF B2以上、修士課程なら大卒資格を有したうえでDALF C1以上のフランス語能力が要求されることにも注意しましょう。

なお、フランスの学士課程は原則として3年間なのに対して、日本は4年間と1年分の差があります。この差を考慮して4年制大学の学部を卒業している場合、いきなりフランスの修士課程2年に登録ができることがあるので、興味がある場合は大学に問い合わせてみましょう。もっとも、いきなり2年目だと論文の準備などで忙しくはなりますが。

フランスの学士課程や修士課程に登録できるだけの語学力があれば、現地の寮などの宿泊施設にコンタクトをとったり、家探しをするのにもさほど支障はないでしょう。

このタイプの留学は、初めての人向けというよりは、すでにフランスでの生活に慣れている人が滞在を延長して勉強するという場合、あるいは初めての留学であっても、その後フランスで進学する予定の人が準備としてひとつ下の課程(修士なら学士、博士なら修士)に登録する場合によく見られます。

ちなみにフランスでは2019年度から、多くの大学においてEU圏外からの正規登録留学生(学士課程・修士課程)の学費が約10倍になったことを受け(それでも日本の国立大学の年間授業料より若干安いですが)、今後学部・修士課程への留学生が減少するのではないかと懸念されています。

もっとも、学生ビザ取得手続きの簡素化、奨学金拡大などを通じてフランスはむしろ留学生増を目指すとしていますが、効果の程は現時点で未知数です。

ワーキングホリデー

「ワーキングホリデー」は協定国どうしの文化交流を促進するための、自由度の高い海外留学制度です。

フルタイムで仕事をしながら現地での生活を経験でき、かつ別途、語学学校に登録するなどして語学留学としての性質をかねることもできるので、自分の好奇心次第、「経験」重視の留学と言えるでしょう。

そのぶん、とりあえず行くだけ行って、ただ漫然と過ごしただけだった! ということもあり得ますが、「まあそれでもいいか」と思えるなら、それはそれでよいと思います。

渡航のハードルが低いぶん、英語圏は志望者多数で抽選ということも多いのですが、フランスはさほど競争率が高いわけではありません。ただし、申請時に満18歳以上30歳未満、ワーキングホリデービザの発給は1度だけ、有効期限は1年間で延長不可、などの条件はありますが。

とはいえ、明確な目的が必要な「○○留学」よりは軽く「ちょっと行って生活してみようかな」という感じでも大丈夫なので、気楽に計画できるのが大きな利点です。

少しでも興味があれば、詳しくはフランス政府の公式サイトから情報を検索してみてくださいね(ただし、コロナの影響でワーキングホリデービザの申請は現在、受付停止状態です)。

他にも、音楽系、造形芸術系の学校に登録する場合など、さまざまな形態がありますが、留学である以上、ワーキングホリデーを除いて基本的にはフランスの教育機関(場合によっては指導教員)からの受け入れ許可を取り付けることと、宿泊地を確保することが先決になります。

日本の教員の推薦書などが必要になる場合もあるので、早めに準備を始めるに越したことはありませんね。

お金のことを考える

奨学金は「資金」かつ「タイトル」!

期間と行先が決まったら、資金面のことも計画しておくのが無難です。

高校や大学、留学担当の機関を通じて推薦を受けるタイプのものもあれば、個人で準備・申請するものもありますが、奨学金には選考期間があるため、応募時期が早めに設定されているものが多いです。

「とりあえずお金はあるから、奨学金はなくてもよさそう」と思う人もいるかも知れませんが、奨学金は資金面のメリットに加えて、「タイトル」としてのメリットもあることを念頭に置いておきましょう。

つまり、将来履歴書などを作成する場合、単に【留学】と書くか、【留学(選考を経て○○奨学金を受給)】と書けるかでは、少し重みが違ってきますね。あと、シンプルに自信にもつながります。

またあくまで一般論ですが、とくに英語圏以外の留学の場合、留学時期が早いほど競争率が低いので、高校生か学部生くらいのうちに思い立ったら、奨学金の選択肢も多いと思います。

ただ一方で、語学の学習をある程度したうえで留学した方が、現地での語学の伸びが早いし楽しい(極端な話、語学ゼロで行ったら楽しむどころか、生活だけでけっこう苦労します)ので、悩ましいところです。

いずれにしても留学を開始したい時期の、だいたい1年半から1年くらい前には調べておくのがよいでしょう。

ワーキングホリデーの場合はもう少し遅くても大丈夫ですが、求人や知り合いのツテで自分が働ける場所を探す作業が必要ですね(現地で探す人もいます)。

ワーキングホリデーは個人のプランによってケースバイケースなので、ここではそれ以外の留学の場合に利用できる奨学金で有名なものを紹介してみます。

ちなみに、以下に挙げたのは「留学を思い立ったらまず見るべき」もっともメジャーな奨学金なので、自治体や機関によって本当にさまざまな種類のものがあります。自分が応募資格に該当するものをこまめにチェックしてみてくださいね!

トビタテ!留学JAPAN

官民協働で2014年から始まったもので、知名度はもっとも高いのではないでしょうか。高校生、大学生いずれでも応募することができます。

国・地域、留学の種類(語学留学か正規登録か)も自由に選べます。現地で積極的に取り組むよう指定された活動がいくつかあるので、その内容を盛り込んで計画書を書きましょう。

自由度が高いということは、逆に言えば計画力が試されるということ。

このような留学がしたい、目標はこうで、将来的にこのように貢献できる、といった明確なモチベーションとストーリーが説明できるかが、申請時の際に重要と言えるでしょう。

日本学生支援機構(JASSO)奨学金

学生支援事業で知られる JASSO の奨学金。貸与型(返済が必要)もありますが、給付型(返済不要)の海外留学支援制度は「協定派遣」「学部学位取得型」「大学院学位取得型」の3種類。

「協定派遣」は在籍大学等の機関を通じて応募、「学位取得型」は高校等を卒業後、直接海外の大学に進学する場合(ということは、実質的に高校生向けですね)、「大学院学位取得型」は修士または博士の学位取得を目的に留学する場合とそれぞれ性質が違います。

留学国・地域によって支給額が変わるのでその点も踏まえて、応募条件に当てはまる場合には検討してみましょう。

フランス政府奨学金制度

フランス側から奨学金を得ることもでき、そのなかでもっとも有名なのはこの政府奨学金でしょう。社会保険給費も受けることができます。

主に理系・文系の修士課程、博士課程の人向けですが、分野によっては学部生も応募できます。

フランス政府の奨学金だけあって、選考のなかで語学力が明確に得点化されています(分野によって英語で選考を受けることもできます)。

C1か、少なくともB2以上にはフランス語力を高めて受験したい奨学金です。

おわりに 〜ひとつずつ着実に進めよう〜

留学準備の段階で考えることについて書いてきましたが、いかがでしたか?

コロナ禍以降、オンライン講義を行う教育機関も増えていて、留学のあり方は今後少し変わるかも知れませんが、現地でいろいろな人たちと交流しながら勉強をするという、基本的なあり方は変わらないでしょう。

内容を概観してみて、「準備することが多いな……」というのが率直な印象かも知れません。たしかに新しい環境で生活するときは大変なことも多いですが、そのぶん得られるものも大きいはずです。

わたし自身、最初のフランス留学でフランス人の生活や仕事に対する考え方が、日本人とあまりにも違うことにとても驚きました。当時のことはよく覚えていますし、最初の留学で得た、経験や人脈も含めた1年間の全体が、いまでは人生の大切な財産になっています。

留学を具体的に考えはじめたら、自分から積極的に情報を集めたり、作業をこなしてゆく行動力と意志が必要になります。

とくにフランスでは日本のように事務的な作業がスムーズではないことも多いですが、乗り越えているうちに強くなれます(ほんとうです笑)。

準備には時間も手間もかかりますが、ひとつずつ着実に進めていって、ぜひ自分らしい留学を実現してくださいね!

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