驚くほど日本で親しまれているカタカナフランス語
日本語のなかには、たくさんのフランス語が入っているので、まったく勉強していなくても、私たちはすでにけっこう語彙をもっていることになります。
あまりに馴染み深くて、あらためて知ると「え、これも?」と驚くものも多いはず。
ここではジャンルごとに紹介していくので、勉強の合間の息抜きに、あるいはフランス語に親しむきっかけにぜひどうぞ!
生活一般篇
デジャヴ déjà(-)vu (m.)
「見たことのあるもの、既視感」で発音としては「デジャヴュ」が近いですね。(見たことがないはずなのに)これ、見たことある! という感じをあらわす言葉。déjà は「すでに」の意の副詞、vu は動詞 voir(見る)の過去分詞形です。
プチ petit, petite (adj.)
「小さい」「かわいい」などをあらわす形容詞。フランス人はなにかと petit を名詞につけては「ちょっと」のニュアンスを出します。« On va prendre un petit café ? » は「ミニサイズのコーヒーを飲もうか?」ではなく(フランスで café というとエスプレッソが出てきて結果的にミニサイズですが)、「ちょっとコーヒーでもどう?」くらい。「プチパン」「プチサイズ」など、日本でもさまざまなものに使われていますね。
ランデブー rendez-vous (m.)
なぜか日本では恋する男女が会うという含みがありますが、フランス語では単に「会う約束」。銀行の担当者やお医者さん、弁護士との予約、事務手続きのための面会など、とにかく誰かと会う予定、あるいはその時間や場所を指します。フランスでは手続きにいちいち時間がかかるので、日本のようにその場で対応するのではなく「ランデブーをとって一人ひとりゆっくり」という場面がよくあります(というか、そんなことしてるから手続きに時間がかかるのでは…?)。
ポプリ pot-pourri (m.)
花や香草、果物、木の実などを乾燥させて作るフレグランスアイテム。芳香性の強い草花を乾燥させて、取り合わせたもの。
プロムナード promenade (f.)
地元の散歩道についていたりする名前。フランス語で散歩。promener は「散歩させる」という他動詞 (ex. promener mon chien) なので、「散歩する」と言いたければ代名動詞 se promener を使おう。
お菓子・飲食篇
ブイヨン bouillon (m.)
主にフランス料理において主にスープのベースとして用いられる、スープストック(肉・野菜のだし汁)。Bouillon Chartier(ブイヨン・シャルティエ)など、店の名前に bouillon が入っていることがあるが、この場合は19世紀からある「大衆食堂」。
シュークリーム chou à la crème (m.)
キャベツ型の焼いた薄い皮の中に、クリームを詰めた洋菓子。chou は「キャベツ」(そして、chouだけでシュークリームを指すことも)。日本語の「シュークリーム」は、フランス語(シュー・ア・ラ・クレーム)の「ア・ラ」の部分が省略され、さらに「クレーム」を英語読みしたもの。
クロワッサン croissant (m.)
croître(増大する)の現在分詞から。名詞では「三日月」の意が一般的。あのパンの形にぴったりですね。ちなみに形容詞 croissant, ante(「しだいに強まる」)の場合、対義語はdécroissant (décroître の現在分詞)。
デカフェ décaféiné (m.)
カフェインレスコーヒーのこと。 décaféiner はカフェインを取り除く、の意。夜眠れなくなるから、といった理由でデカフェを飲む人はフランスにもいる(そもそも小さなエスプレッソはただのお喋りの口実で、コーヒー自体を味わうためじゃないことが多いし)。フランスではデカdécaと略して、Je prendrai un déca. と言ったりする。
ラングドシャ langue-de-chat (f.)
フランスで伝統的な楕円形のお菓子で、直訳すれば「猫の舌」。形をよく表していますね。北海道の「白い恋人」はラングドシャにチョコレートを挟んでいます。
ミルフィーユ millefeuille (m.)
パイ生地の薄い層の間にクリームを挟んで重ね合わせ、表面に粉砂糖をまぶしたお菓子で「1000枚の葉」の意。これも形をよく表していますね。ちなみにカタカナ表記としては「ミルフゥィユ」くらいが近いでしょうか。「ミルフィーユ」とそのまま発音すると mille filles(1000人の娘)になります。feuille(葉)は女性名詞でも millefeuille は男性。
パティシエ pâtissier(女性形はパティシエールpâtissière)
「お菓子職人」あるいは「お菓子屋(ケーキ屋)」のこと。とはいえ「お菓子屋(ケーキ屋)」の意味では、pâtisserie を使うことが多いでしょうか(パン屋が合体してboulangerie-pâtisserieになっていることもしばしば)。ちなみに pâtisser は「生地をこねる」という他動詞。
芸術・思想篇
アール・ヌーボォー art nouveau (m.)
直訳すれば「新しい芸術」。19世紀末から20世紀初頭にかけて流行した芸術様式、デザインの近代的様式で、曲線のモチーフを特徴とする。
アバンギャルド avant-garde (f.)
軍隊用語の「前衛」から派生して「前衛芸術」の意になった。
アンコール encore (adv.)
「また」「再び」の意の副詞。日本でもコンサートで聞くことがありますね。ちなみにこれはフランス語から英語に入り、その後日本語になった言葉。フランス語では、コンサートなどのアンコールをビス bis (m.) と言います。
シュール sur (prép.)
sur は「…の上に」を表す前置詞。超現実主義(シュルレアリスム)surréalisme を誤って略したもの。ちなみにレアリスム réalisme は現実主義。
番外編 フランスでもこれは英語
自分たちの言語に誇りを持ち、あくまでもフランス語の表現にこだわるフランス人。それでも日常生活のなかで「え、そこは英語なの?」と思う瞬間もあります。以下はそんな、意外にも日本でもフランスでも市民権を得た英語たち。
バーベキュー barbecue
文字通り、バーベキュー。発音はフランス語読みで。当然、街中ではあまり使う機会がないけれど、ケバブのソースの選択肢にあったり。ちなみに、よくその隣に「サムライソースsauce samouraï」という辛いのがある。
デザイン design
英語の場合、動詞か名詞で使うことが多いけれど、フランス語の場合は名詞、あるいは形容詞(!)で使われる。英語のように「ザ」にアクセントを置いたかっこいい発音ではなくて、「ディザィ〜ン」とフランス語らしく最後を気持ち伸ばします。意味は一緒で、デザイン(性あふれた)くらい。
フレンチプレス French press
意外にもイタリア人デザイナーの作によるコーヒー抽出器具。最後に豆を底の方に押して溜めることから、Cafetière à piston というフランス語もあって、もちろん専門の人には通じるが、日常的には「フレンチプレス」(r はややフランス語っぽく発音)と言った方が伝わりやすい。
おわりに
いかがでしたか? フランス語を話せなくても、案外馴染みのある言葉が多かったのではないでしょうか。
そしてそれぞれの単語も、フランス語だと意外と奥が深いことを知ってもらえたら嬉しいです。
こんなにフランス語を知っているんだから、一度は行ってみたい! と思われたかも知れません。少しでも興味がわいたら旅行や留学で、ぜひフランスを検討してみてくださいね。