センター2020フランス語寸評&共通テスト2021への対策は?
大学入試センター試験(以下、センター試験)は、2020年1月の実施を最後に31年間にわたる歴史に幕を下ろし、2021年以降は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に変更になります(2021年は1月16, 17日に実施予定)。
※なお、本記事はセンター2020に関するもので、最新の共通テスト2021フランス語に関する記事はこちら↓です
フランス語の方が楽? 共通テスト2021の難易度と分析史上初の共通テスト、そのフランス語がどんな試験だったか、そのポイントをまとめます(あくまで個人的な見解です)。ひと言でいえば、昨年(センター試験2020)より全体的にはやや難[…]
共通テストへの移行といっても、基本的には時期・内容ともに現行のセンター試験を踏襲し、大きな変更があるとすれば2024年度以降となる見通しです。
コロナ禍での授業数減とも相まっていろいろと先行きが不透明ななか、不安を感じる受験生の人も多いと思いますが、外国語(英語以外)に関しては、ひとまず2020年までから枠組みのうえで変更はなく、従来どおりリスニングもありません。
とりわけ試される能力については、すでにセンター試験フランス語が基礎的な力をはかるのに十分な質を備えたものなので、2020年までの試験で点数が取れていた受験生が、様式の違いだけで大きく点数を落とす、ということはないでしょう。
日々の学習とセンター試験の過去問をはじめとした問題演習が必要なことに変わりはないので、周囲に流されず着実に進めていってほしいと思います。
2020フランス語、どんな試験だった?
受験者数と平均点
センター試験2020の平均点については、100点満点換算で英語の筆記が58.15点(リスニングは57.56点)なのに対し、フランス語は69.20点(ドイツ語73.95点、 中国語83.70点、韓国語73.75点) でした。
受験者数が大幅に異なっている(英語筆記518,401名、英語リスニング512,007名であるのに対し、フランス語は121名、ドイツ語116名、中国語667名、韓国語135名)ので単純比較はできませんが、フランス語受験を選んでいる時点で、少なくとも英語よりは高得点が取れる可能性が高いと考えられます。
フランス語にある程度の自身がある人しか受験しないことに加えて、リスニングがないぶん落ち着いて解ける点も、平均点が高いことの一因かも知れませんね。
試験問題の概要
個々の問題についての解説はこの記事の最後にのせた動画で行っているので、ここではポイントを絞って見ていきましょう。
センター試験2020 フランス語の内容を概観すると次のようになります。
大問 | テーマ | 配点 | 出題内容 |
---|---|---|---|
1 | 発音問題 | 10 | 単語の一部の発音が異なるものを選ぶ。リエゾンも問われた。 |
2 | 同義文判定 | 18 | 意味の近い文を選ぶ。基礎的な定型表現や熟語の理解が必須。 |
3 | 語彙・品詞転換 | 32 | 空欄に補充すべき綴りを選ぶ。性、品詞、時制の理解も問う。 |
4 | 文法・語法 | 24 | 空欄補充。関係代名詞、現在分詞、接続法の理解など幅広い。 |
5 | 会話文完成 | 25 | 問いと受け答えから、間に入る適切な応答を選択。 |
6 | 図・説明文書 | 33 | 間取図、広告文から情報を得る。設問のパターンはさまざま。 |
7 | 長文読解 | 33 | 約1ページ分の長文。空欄補充、文意理解、内容一致など。 |
8 | 語順整序 | 25 | 日本語の意味になるよう空欄を補充して仏作文を行う。 |
問題全体を通して、フランス語の基礎的な知識を問うものと言えますが、幅広い知識と総合的な処理能力が必要という意味では、第4問、第7問、第8問で差がついたかも知れません。
逆に言えば、その他の問題は知識や自然な言いまわしを知っていれば、(とくに第6問など)手間はかかっても正しい答えを導くのはさほど難しくはないでしょう。
いくつか取り上げるとすれば、第4問はとくにバリエーションが豊かだったと言えます。問1は不定代名詞、問2は関係代名詞、問3は時制、問4は最上級表現、問5は現在分詞、問6は状況補語節、問7は否定の冠詞de、問8は中性代名詞といったように、見落としがちな知識も含めて満遍なく問うています。
そうかと思えば第6問のように、日常生活で目にする資料(間取り図・ハイキングのプログラム)から必要な情報を読み取ることができるかという、実務的な能力・コミュニケーション能力を試す問題もあり、判断力を広く試そうという意図が窺えます。
気になる2021への対策は?
共通テスト2021へ向けた対策としては、これまでと変わらず、まずは発音を含めた単語と表現の暗記を徹底しましょう。
よく言っているのですが、熟語は « avoir hâte de + inf. » のように抽象的な形ではなく、 « J’ai hâte de faire du ski. » のように具体的な例文をまるごと覚えておく方が結果的に汎用性が高く、効果的です。
そのうえで文法問題の練習を過去問や問題集を使って何度も繰り返し練習、間違えたところは復習して穴をひとつずつ潰してゆきましょう。
出来なかった問題をマークしておいて、1週間後、1か月にもう一度解くというのも効果的です。
またリスニングがないからといって、何も聞かなくてよいわけではありません。センター試験・共通テストがいずれも実践的な「コミュニケーション能力」を問おうとするものである以上、日常生活で使う言いまわしを押さえておくことは非常に重要です。
大学の講義のような硬い文章を聞き取る必要はありませんが、日常の場面をピックアップしたような教材を使いながら、そこに出てくる表現を学んでゆくようにしましょう。
さらに、長文読解対策として、ある程度のまとまりがある文章を読み進めるだけの体力も必要です。
過去問を見る限り、こちらも過度に硬質な文章が出ることはないですが、客観的な文章を読み解くだけのフランス語力と「国語力」が求められるので、試験用紙1ページ分程度の分量のフランス語に怯まないよう、問題集などを用いて対策しておきましょう。
語順整序問題に関しては、英語の場合と違って市販の問題集があまりカバーしていないので、センター試験過去問が一番の検討材料になるでしょう。
繰り返しになりますが、センター試験は高校卒業程度のフランス語を試すのにふさわしい、バランスの取れた問題になっているので、まずは満点が取れるように知識をつけていきましょう。
共通テスト対策におすすめの教材
おすすめ教材一般についてはこちらの記事↓で紹介しています。
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そのうえで、とくに「共通テスト対策」をしたい人のレベルに合いそうな教材を紹介します!
・ヴェスィエール・ジョルジュ『仏検準1級・2級対応 クラウン フランス語単語 上級』(三省堂)
単語帳の中ではかなりおすすめできます。すべての単語に発音記号がついていて、音声教材もあり(ダウンロード方式)。レイアウトも綺麗で、モチベーション維持にも問題ありません。
発音記号を見ながら、単語を実際の発音と照らし合わせることができるうえ、例文とともに暗記することで、効率よく覚えることができるでしょう。受験生なら「仏検準1級・2級対応」までこなしておけば安心。
・西村 牧夫『解説がくわしいフランス文法問題集』(白水社)
英語と違ってフランス語は文法に特化した問題集が少ないなか、この本は練習問題が充実しています。
しかもその名の通り細かいニュアンスの違いなどを含めたくわしい解説が嬉しい。着実に進めていって一冊を終えると、基礎力がしっかり身につくように構成されているのでおすすめです。
・東郷 雄二『フランス文法総まとめ問題集』(白水社)
こちらも効率よく知識を確認できる問題集です。試験の数か月前に文法の穴を潰す作業にはとても役立つでしょう。
「試験対策」という観点からはややずれますが、同じ著者が文法事項を詳細かつコンパクトにまとめた『フランス文法総まとめ』(白水社)の姉妹本です。
ちなみに、上に挙げた『解説がくわしいフランス文法問題集』との違いは、『解説がくわしいフランス文法問題集』が少しずつ解いては解説を読んで、というふうに日々の着実な学習に使いたい人向けなのに対して、『フランス文法総まとめ問題集』の方は、総復習などで知識事項をスピーディーに確認していきたい人向け(とはいえ詳しい解説もついています)と言えるでしょう。
・久松 健一『仏検対応 クラウン フランス語熟語辞典』(三省堂)
「表現暗記」のために心強い一冊。少し分厚い本ですが、意欲のある人にはおすすめです。
仏検レベル1級から5級まで、あらゆる成句表現を網羅。「辞典」という名前の通り、必要なときに調べることもできるし、それぞれの表現に短文が載っているので最強の熟語帳としても使えます。
現在の自分のレベルからスタートして、知らない表現を次々吸収するのに役立つでしょう。
・Christian Kessler、 山下 利枝『耳が喜ぶフランス語 リスニング体得トレーニング』(三修社)
「長文を次々読みこなしたい!」という方におすすめなのは、音声とスクリプトのついたこちらの参考書。
とくに後半はレベルの高い文章になっているので、かなり力がつきます。ただし、問題はとくについていないので「読むこと」に集中するための本。
「共通テストの長文読解対策として問題が解きたい!」という方は、仏検2級〜準1級の長文読解(内容一致問題)で練習するのもよいでしょう。空欄補充の有無など、すべてが同じ形式ではありませんが、仏検がすらすら解けるようになれば、共通テストでも苦労は感じないはず。
白水社の『仏検対策2級問題集[改訂版]』『仏検対策準1級・1級問題集[改訂版]』のシリーズが、長文読解に関しては全訳があり、解説も丁寧でおすすめです。
ただし、これらの「仏検対策本」は長文問題だけに特化しているわけではない(他の出題形式も収録している)点に注意しましょう。
おわりに&動画はこちら
いかがでしたか? 2021年から共通テストが始まるとはいえ、大きな枠組みが変わるわけではありません。
基本的な学習を積み重ねて、(センター試験の第6問、第8問のような)形式的に独特な問題に慣れておけば、本番で戸惑うことはないでしょう。
また、センター試験には良問も多いので、仏検やDELFを受ける前の力試しに、一度解いてみるというのもよい練習になるかと思います。
いずれにしても、共通テストはあくまでも通過点であることを忘れず「フランス語でコミュニケーションを取る能力」を念頭に、自分のフランス語を上達させるためのひとつのきっかけとポジティブに考えて、みなさんこれからも頑張ってください!
共通テストだけでなく、フランス語を2次試験でも考えている方は、よくある出題パターンと対策を分析したこちら↓もどうぞ。
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↓センター2020フランス語、【全問】解説動画はこちらからどうぞ!
第1, 2, 3問はこちら
第4問はこちら
第5, 6問はこちら
第7問はこちら
第8問 (完) はこちら